爛熟と腐乱のストレッタ

かつて共に笑い合い、かけがえのない時を過ごした友よ。あの幸福な日々は今や彼方。
美しき華は爛熟し、今や腐乱の影を纏いて薫る。
正しき騎士よ、哀れなる同志を救い、狂える追追部(ストレッタ)の訪れを防ぎ給え。

ドラクルージュの基本ルールブックを用いて行える少人数長編シナリオ。
取り回しやすく、かつ初心者の方が参入しやすいものを目指しました。
ストーリーは割と鬱というか胸糞悪いですが、ドラクルージュらしくはあると思います。
NPC間の描写に薄っすら百合に見えなくない部分もありますのでご注意ください。

そしてDRにとっては常時最大二人のNPCを操作するという、けっこう重たい感じの構成になっています。

手を加えることで『ヘレティカノワール』及び『ノブレスストーリア』にも対応可能だと思われます。
また、一部内容に上記二つの追加ブックで提示された知識が含まれていますので、DRに余力がありましたらそちらも目を通しておいてください。


■シナリオ諸元

推奨プレイヤー人数:DRを含んで2~4人
推奨PC逸話数:1〜2
篇:2
レギュレーション:基本ルールブック

注意: こちらのシナリオは一対一のソロシナリオ(ハードモード)としても回すことが可能です。その場合は適宜PLに合わせて敵の数や存在点を調整して下さい。

■物語の概要

 貴卿らはローゼンブルクが一人イザーク卿の招きを受け、
 ローゼンブルク領内にあるその屋敷へ向かう途上にあった。
 其処で貴卿らは一人の騎士と相見える。
 彼の騎士の名はメルセデス。
 どこか切羽詰まった様子の彼女は、イザーク卿の屋敷の途上にある街に用事があるという。

 聞けば、街では「魔女」による人殺しが起きているということ。
 騎士たるもの、力無き民草は守らねばならぬ。
 まして相手が異端かも知れぬというなら尚のこと。
 メルセデス卿と共に街を訪れた貴卿等は、
 そこでローゼンブルクの闇の一端を垣間見ることになる。

■物語の背景

 今回の事件に至るまでの時系列は以下のようになっている。
 ①アグネス卿、イザーク卿に仕えることに
 ②アグネス卿、当時既に堕落していたイザーク卿によって望まぬ叙勲
 ③アグネス卿、寵童として軟禁される。メルセデス卿、叙勲される
 ④数年後、アグネス卿の手引きによる難民の虐殺
 ⑤虐殺を止められなかったメルセデス卿、アグネス卿を止めるため遍歴に

 アグネス卿を叙勲したイザーク卿は、当時の時点で既に堕落している。今回の出来事の発端は、彼による身勝手な叙勲と、アグネス卿を寵童として軟禁し側に留め置いたことにある。

 イザーク卿は自らの堕落を巧妙に隠し、自領の民から見目の良い者たちを差し出させ、叙勲し、寵童として囲っていた。アグネス卿は不運にもイザーク卿のお眼鏡に叶ってしまった、そんな生贄の一人だったのだ。
 


■ハンドアウト

PC①
消えざる絆:メルセデス【友】
推奨の【道】:遍歴
貴卿は遍歴の騎士であり、此度はイザーク卿に目通りするため屋敷に向かう途中であった。
メルセデス卿とは嘗て背中を預け合った仲。共に語り合ったことも数知れず。
されどここ暫くは彼女に会うこともなく、その息災を知ることもなかった。
ヘレティカノワールを利用する場合、このPCに「イザーク卿の悪事の一端を知っている、または悪事について追っている」旨の秘密を所持させても良いだろう(その場合、明かされた相手はPCに対して1点のノワールを獲得する)。

PC②
消えざる絆:イザーク【敬】
推奨の【道】:領主
貴卿は領主として先達であるイザーク卿を、統治者として敬っている。
その手腕を学ぼうと屋敷に向かう途中、メルセデス卿や他の騎士たちと知り合った。
イザーク卿にまつわる暗い噂は貴卿も耳にしてはいるが、顔見知りである彼の姿とは結びつかない。
今回の来訪にはその真意を測る意図もある。
もし仮に噂が事実ならば……貴卿は同じ領主の身として、決断を迫られるであろう。
PCを2名とする、或いは一対一として行う場合はこのキャラクターを削除すると回しやすくなるだろう。

PC③
消えざる絆:PC①【友】またはPC②【主】
推奨の【道】:遍歴または近衛
貴卿は遍歴の騎士の友、或いは主を持つ近衛である。
彼らの行く道に共にあり、武勇と優美の栄誉を得てきた。
イザーク卿に対しては、良き領主としての噂と悪い噂の両方を聞き及んでいるため、少なからず警戒しているだろう。
ヘレティカノワールを使用する場合、異端を配置するならこの役割が最も適しているだろう。
その場合、PC①の秘密をこちらが担っても面白い。

■NPCについて

"凜然卿"メルセデス・イエーガー・フォン・ドラク
 「私には為さねばならぬことがある。例えこの身が堕ちようとも」
 「久しいな、PC①。こうしてまた会うことができて嬉しいよ」
 "凜然卿"の二つ名を持つ、凛とした佇まいの騎士。
 アグネス卿とは叙勲以前からの友人であり、共に同じ村で育った。
 かつては自らを叙勲した騎士の近衛であったが、故あって現在は遍歴の身の上である。
 実は堕落の兆しが見えかけているが、それでも自らを律し、友を救うべく奔走している。
 彼女のデータは公式ルールブックの「好敵手(騎士)」+ドラクの家門どれかを使用すること。
 ソロシナリオの場合は実際に「ドラクの遍歴」で行いを組むことで難易度が調整できよう。

  • PC①に対して
    かつて背中を預け合った友である。故に彼の騎士に対しては幾分か砕けた態度を取るだろう。しかし友であるが故に堕落の兆しを決して悟られぬよう振る舞うであろうし、どこか切羽詰った様子の理由もなかなか語ろうとしないであろう。

"陶酔卿"アグネス・リリエンタール・フォン・ローゼンブルク
 「どうか、どうか、私に愛をお与えくださいませ」
 「ねえ、メル。私たち、ずっと友達よね?」
 メルセデス卿と叙勲以前からの友である、ローゼンブルクの騎士。
 明るい性格と軽やかな身のこなしが愛らしく、一夜の恋を楽しむ享楽的な面を持つ。
 イザーク卿に叙勲され目をかけられていたが、現在は行方を眩ましている。
 「メル」ことメルセデス卿とは叙勲以前からの友人であり、共に同じ村で育った。 
 彼女のデータは公式ルールブックの「堕落寸前(不徳の騎士)」を使用すること。

"疑獄卿"イザーク・グスタフ・シュルツ・フォン・ローゼンブルク
 「我らがローゼンブルクの、永き繁栄を祈って」
 ローゼンブルク当主グランツ卿の覚えめでたき子爵。
 グランツ公を敬愛し、ローゼンブルクの発展のため身を粉にしている。
 領主としての優れた統治で有名だが、一方で幾つかの堕落者が起こした事件に関わっているのではと噂されている。
 彼のデータは[常の幕]および[戦の幕]では公式ルールブックの「陰謀家(不徳の騎士)+ローゼンブルクの家紋「花冠」を用い、[終の幕]では「夜獣卿(堕落者)」を使用すること。

  • PC②に対して
    優雅で鷹揚たるイザーク公は、彼の騎士に対しても親しげな様子で話しかけてくるであろう。堅苦しさを嫌う公の振る舞いは後進であるPC②の緊張をほぐす。しかし、時折堕落への誘いとも受け取られかねない冗句を口にする不遜さは時に辟易とさせるかもしれない。

■序の幕

PCの自己紹介
消えざる絆の取得

これらを行った後、DRは「物語の概要」の内容を読み上げたり、世界観の説明をしたりすると良いだろう。

また、物語の導入として、PLたちが参加しやすいように以下の口上から始めて


■篇

このシナリオでは、まず[常の幕]が発生する。

●[常の幕]
 この幕では、一行がメルセデス卿と出会い、共に村へと向かう様子が描かれる。
 PCたちは顔見知りでも良いし、初対面でも構わない。
 必要によっては、出会いの場面を別途演出しても良いだろう。
 この幕は2ラウンド経過または全NPCを壁の華にした時点で終了となる。

 幕の諸元
 
*NPC種別
  〔端役〕村人(喝采役/P264)×4、村娘(熱烈な味方/P264)×1
  〔脇役〕メルセデス卿
 *NPC配置
  庭園(村に至る道):メルセデス
  宮廷(村の入口):村人×2
  玉座(村内部):村人×2、村娘
 *存在点
  メルセデス:〔参加PC数×3〕点
 *行動値
  メルセデス:〔参加PC数×5〕点
 *壁の華時
  メルセデス:何かを言おうとするが、振り払うように村へと歩みを進める
  村人(一人目):最近村で真夜中に人攫われていることを話す
  村人(二人目):獣かと思ったが情報が無いことを話す
  村人(三人目):若い娘ばかりが狙われていることを話す
  村人(四人目):前に村の前に美しい女性が立っていたのを見たと話す
  村娘:村にはもう若い娘が自分しかいないことを話す
 *絆奏
  メルセデス【友】

●[戦の幕]
 この幕では、村人を攫おうとしているアグネス卿との戦いが描かれる。

幕の諸元
*NPC種別
 〔端役〕村娘(熱烈な味方/P264)×1、
 〔脇役〕メルセデス卿、アグネス卿

●[常の幕]
 この幕では、イザーク卿の隠された闇を暴くためのやり取りが繰り広げられる。

[戦の幕]
 この幕では、イザーク卿の闇を暴くべく屋敷に突入する様子が描かれる。

●[終の幕]
 この幕では、夜獣卿と化したイザーク卿との戦いが描かれる。

■後の幕


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